dawn,light

「光といふことを」人めには/みえぬものから/かがやくは/こころの底の/光なりけり

初冬の朝

おしゃれしてくれると嬉しいわ、と朝の食卓で母から言われた言葉に、びっくりして、少し恥ずかしくて、上手く受け取れなかった。

きれいでいること、好きな服を着ることは、誰の為でもなく、間違いなく私の為だ。
でも、私が心から楽しんでいることを見ているだけでも嬉しいわ、と言ってくれる人がいること。
何と幸せで豊かで、満ち足りていることか。
そんな風に喜びに満ち溢れ、自分以外の誰かがいること、誰かと共に人生を送る時の重なること、その輝きの眩しさに煌めきの強さに、少し目を細めてしまう。

誰かを想い歌い綴る人の奏でる音が心に響けば響くほど、そのコントラストに、その強烈な甘やかさに心がそれを強く強く望んでしまうのだ。
でも、いや、だからこそ、いま、身の周りに溢れている淡く穏やかなささやかな甘さにもハッとさせられる。
どんなところにそれを感じ取るかは全て私に委ねられている。
料亭のお味噌汁ではなく、毎朝の食卓に並ぶお味噌汁にふと満ち足りた幸せを感じることもあるように。

私が考えをこねくりまわすよりも、もっと楽に簡単に欲しいものことは受け取れることが出来るのだ。

ふと空を見上げれば晴れやかな初冬の青空は澄み切っている。
少し前に満月だったお月さまは、朝の光に包まれて姿形は変わっていても、その存在は変わらずいてくれる。
奥には冬化粧を施した富士山、その手前には紅葉の鮮やかさをたたえた山々がある。

日日は穏やかな中にも奇跡に満ちている。